日本には昔から質の高い絵画が制作されていましたが、江戸時代
中期から、画風が多岐多様となり、画家の支持層も拡大しました。
構成も技法も進展し、創造性に富んだ作品が多数誕生しました。
明治になると西洋絵画の影響を受けながら従来の日本画の手法が
発展継続していきました。
横山大観や竹内栖鳳ら優れた作家が日本の伝統的な表現技法を
基盤に西洋の絵画思想や技術を取り入れ、融合させて、日本画は
より高質となり現代に及んでいます。
描く面(材料)
絹
絹織物は地肌が美しく絵画の発色性に優れ古くから基底材として
使われてきたが、厚塗りが難しく膠加減を間違えると剥落するなど
取扱が難しいため、現代ではあまり使われない。
雲肌麻紙
日本画に用いる紙は幾種類もあるが、色のりがよく丈夫で大きいサイズ
もとれるため、現代ではほとんどの画家が雲肌麻紙を用いている。
筆
初心者がそろえる最小限の筆を紹介します。
A.長流(ちょうりゅう)筆
穂先が滑らかで使いやすい
B.削用(さくよう)筆
硬い線引きに用いる
C.面相(めんそう)筆
細い線引きに用いる
D.平(ひら)筆
彩色一般に用いるが慣れたら側面を使って線引きにも用いる
E.彩色(さいしき)筆
絵具の含みがよい
F.隈取(くまどり)筆
ボカシ筆とも言い、色を載せた縁をボカスのに用いる
G.連筆
羊毛の丸筆を何本か連ねた筆
広い面に均筆に絵具を広げるのに便利
H.刷毛
広い面積に色を塗るのに用いる
パネル
木の枠にべニアを張ったもの
これにドーサ液を塗った雲肌麻紙を水張りして絵を描く
絵具
胡粉
厚い牡蠣殻を砕いた白い粉
日本画では古くから白色に使い、また、基礎塗の材料としても
欠かせない
盛上げ
胡粉に丹を加えて加工した胡粉で基礎塗等に用いる
岩絵具
天然の原石を細かく砕いたもので、原石によりいろんな色がある
同じ色でも粒子の細かさによって色相が分かれ、粒子が細かい
程、色が明るくなる
水干(すいひ)絵具
天然の土、または胡粉や白土に染料を染めつけた細かい
粒子の絵具
細かいタッチで描け、薄めたりも簡単にできる
練習用にもなる
その他に顔彩(がんさい)や棒絵具がある
道具
絵具皿
スプーン
膠をすくったり、水をすくったり、絵具をすくうのに用いる
3本あれば便利
ドライヤー
日本画は色を積み重ねて表現するが塗った色を乾かしてから、
その上に別の色を塗るので乾燥のときに用いる
乳鉢
筆洗い
硯。墨
消耗品
膠
ドーサ液
カーボン紙
その他、上達するに従い、他にも道具や消耗品が必要と
なるが、習い始めは基本的必要品として以上のもので
充分である
絵具は初めから多数そろえる必要はなく、描いていくうちに
必要な色を加えていけばよい
紙や絹、木などに墨、岩絵具、胡粉、染料などの天然絵具を用い、
膠(にかわ)を接着剤として描きます
制作手順は大別すると次のようになります
1.下図を描く
2.下図を画面に転写して墨で骨書きする
3.盛上げ(胡粉等)と水干絵具の混合で画面全体(必
要の場合は別の色を部分的に分ける)を塗り下地
を作る
4.あとから重ねる色を計算して下塗りをする
5.描き込みでイメージどおりの作品に仕上げる
下図を作る
まずスケッチにより表したい対象物の表情をとらえる
水彩絵具、鉛筆、クレパス等、方法は自分に合ったもの
を用いたらよい
写真を撮ったらスケッチの補完になって便利である
下図はスケッチをもとに構図、色合い、明暗等作品の出来上がりを
指図する設計図のつもりで丁寧に作る
骨書き
下図を画面に移し、墨でしっかり線描することを骨書きという
方法は念紙を画面の上に置き、その上に下図を乗せて赤ボールペン
で図の輪郭をなぞり、画面に図の輪郭を写す
その輪郭線を細筆でなぞり、しっかり墨描きする
念紙は丈夫な和紙に黒炭を塗りこんで作る
カーボン紙を代用してもよい
下地を作る
日本画は絵具を画面に膠で定着させて表現するが、絵具で色を
塗り重ねて深みのある画面に仕上げる
そのため、画面に最初に定着させる絵具の層はしっかりと画面に
固着すると共に、その上に重ねる絵具を支える役目に耐え
なければならない。その層を下地という
絵具は色の粒で出来ていて、色や同色でも番号によって粒の
大きさが異なる
番号が大きくなると淡い色になる。6番7番は濃い色で13番は
淡く白っぽい色になるので13番を白(ひやく)という
画面のすぐ上には大粒を並べ、その上に少し小さな粒で重ね、
さらに上に小粒の絵具を重ねると図1のように、しっかり固定
した石垣のような絵具の層が出来る。これが下地である
図1
下地の絵具は盛上げ(胡粉等)に黄土色等の淡い色(骨書きを
残すため)を加えた混合絵具を用いる
下塗り
塗り重ねることによって深みのある色合いが表現されるので、
後から重ねる色を計算して下塗りの色を決める
描き込み
下塗りの上からイメージの完成に向け、必要な色を描き込んでいき、
何度も全体の調子を見て手を加えていく
下塗りから描き込みまでの絵具の使い方、筆の使い方の基本を
会得するには、日本画教室等で先生の指導を受けることが望ましい
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